本研究は、ハンセン病社会復帰者に対する面接調査や自伝分析等を通して、療養施設を退所するまでの過程や心理的経緯、退所後の動向と心理的状況、現在必要とする心理的サポート等を中心に、彼らの生涯発達の過程を明らかにすることを目的とする。 平成19年度は、面接協力者の現況等をたずねながら、ラポール形成を図った。その結果は次の通りである。 (1)今回協力していただいた社会復帰者は現在老年期を迎えており、職から引退していた方がほとんどであった。他の高齢者と同様、老いに伴う病気を抱えているが、社会復帰者の場合は治療する医療機関の選択に苦渋している。一般的な医療機関では差別を受ける可能性がないとはいえず、またかつていた療養所に診察へいくのも退所者という立場では難しいようである。この状況は社会復帰者一般にみられるようである。 (2)療養所入所者の場合と同じように、自伝や詩歌等、自身を表現したり、人生について何らかの形で残したいという強い意思を持っており、実際に公刊したり、講演活動をされている方も存在する。 (3)自身の過去について、特に職業生活や、退所後の生活基盤作りについて意欲的に語る方が多いようである。しかし、その内容は、ハンセン病回復者であることを常に隠さなくてはならない人生であり、根強い差別や偏見が示唆されるものである。
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