研究概要 |
目的 山本(2006)は,テキストデザイン技法の一つである標識化の認知加齢メカニズムを示す中で,標識化の明示性のレベルが有効であることを示した。ただ,見出しによる標識化を例にとっても,それは,文字サイズ,アンダーライン,インデントなど多彩な様式で実現されており,どの様式が高齢者の読解と学習に有効かは不明である。本研究は,標識化の様式を操作し,読解についての指標として「わかりやすさ」を,学習についての指標として「電話のかけやすさ」をとり,評価させた。 方法 実験参加者:高齢者90人と若齢者90人。 実験材料と手続き:10の手順文からなる説明書。3つの上位手順を見出しとして挿入する際,付与される文字サイズ,アンダーライン,インデントの有無を操作し,(1)見出し無し条件,(2)見出しのみ条件,(3)見出し+文字サイズ条件,(4)見出し+アンダーライン条件,(5)見出し+インデント条件を設定した。「わかりやすさ」と「かけやすさ」について7段階評定を求めた。 結果と考察 分析から,「わかりやすさ」と「かけやすさ」が年齢と標識化の様式による影響を受ける一方で,年齢に関わらず,「見出し+文字サイズ」の評定値が「わかりやすさ」と「かけやすさ」でともに最も高かった。「見出し+文字サイズ」という様式で上位構造性を明示したテキストデザインが読解と学習の両面を支援することが示された。また,高齢者の結果に絞り,他の様式について検討を進めると,以下の3点が明らかになった。 (1)読解・学習でともに,「見出し+文字サイズ」が最高点で,「見出し+アンダーライン」が次に続く。 (2)読解・学習でともに,「見出しのみ」と「見出し+インデント」で差が無い(若齢者では読解のみで差)。 (3)読解では「見出し無し」より「見出しのみ」が高いが学習では差が無い。 #今回の結果は,2007年の日本心理学会総会で発表される。また,これに先立ち,2006年の日本教育心理学会シンポジウムで本研究の一部が発表された。
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