研究概要 |
平成21年3月31日時点において,合計33名の協力者を得ている。その内9名が2歳になり,アタッチメント実験・Bayley発達検査を終了している。 新生児期アテンションと脳波前頭部非対称性との関連性に関して検討したところ,退院後1ヶ月時点で脳波前頭部左優位群と比較して,脳波前頭部右優位群の児がNBAS非生命的刺激クラスターにおいて有意に高い得点を示した(Mann-Whitney U Test, p<.05)。 また,脳波前頭部右優位性と退院後12ヶ月でのアタッチメント行動との関連性を検討した。その結果,退院後3ヶ月時点で脳波前頭部右優位性の高い児はストレンジ状況法実験の第5エピソード(母子再会場面)にて母親に対する接触維持行動得点が有意に低かった(Mann-Whitney U Test, p<.05)。これは母親との再会場面において,一度成立した母親との身体的接触を維持しようとする欲求が低いことを意味する。多くの場合,このタイプの児は母親とではなく,プレイルーム内の玩具で遊ぶことを選択する。この結果,必然的に接触維持行動得点が低下するのである。 以上の結果は新生児期において脳波前頭部右優位性の高い児は非生物刺激に対する反応性が高く,そして母親に対して何らかの抑制傾向が存在する可能性を示唆した。今後はNBASに代表される新生児期アテンション・脳波前頭部右優位性・アタッチメント行動と2歳時点における認知発達との関連性を検討する予定である。
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