抑うつ傾向(BDI男性13点以上、女性16点以上)の大学生16名をRDI(資源の開発と植え付け)群、CT(認知療法)群に振り分けた。各被験者は2週間にわたる自習型の訓練をオーディオテープとワークシート(RDI群)、もしくはワークシートのみ(CT群)で受けた。RDI群は典型的なストレス場面の同定、必要な資源記憶の同定、そのさまざまな感覚要素、それを繰り返しイメージ練習することからなっていた。CT群は典型的なストレス場面の同定、否定的認知の同定、反証を見つけることによる反論からなっていた。最低5回、宿題として実施してもらった。彼らの記録を見ることで、彼らの理解や動機は確認した。従属変数はBDIとPOMSであった。BDIはトレーニング開始4カ月前、直前、直後、1カ月後の4回測定された。POMSは、1回目のトレーニングの前後、5回目のトレーニングの前後に測定された。BDIの2(群)×4(時期)の分散分析の結果、時期の主効果のみが有意で、トレーニング前から後にかけて改善し、フォローアップでも維持されていた。POMSの初日、最終日それぞれを2(群)×2(時期)の分散分析を行った結果、最終日には両群とも有意、もしくは傾向として各下位尺度で改善が確認された。一方、初日には、活気と疲労の尺度でRDI群のみが改善が有意であった。結論として、自習型のRDI、CTともに大学生の抑うつ傾向の緩和に有効であった。RDIの有効性はCTと同様であったが、即効性においてはRDIの方が優れていた。この即効性は治療動機の維持や、ドロップアウトの防止に役立つ可能性がある。元来、RDIはEMDRの準備段階での使用を目的としていたが、より広範な適用を考える必要があるだろう。
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