研究概要 |
実験協力者61名を抑うつ傾向群30名(SDS41点以上)と非抑うつ傾向群31名の2群に分け、それぞれの群を、感覚・知覚レベルを豊かにさせるような手続きであるRDI(肯定的資源の開発と植え付け)Resource Development and Installation)に倣った手続きによって肯定的な自伝的記憶を想起してもらう群(感覚・知覚レベル介入群)と、概念レベルで肯定的な自伝的記憶を想起してもらう群(概念レベル介入群)に分けた。抑うつ傾向群が非抑うつ傾向群と比べてポジティブ・ネガティブ感情がどれほど喚起もしくは緩和されるかを介入間で比較検討した。感情は事前事後にPOMS-Bを用いて測定した。実験者は、EMDRの治療者としての正規の訓練を修了した男子大学院生1名が当たった。 仮説1:抑うつ傾向群、非抑うつ傾向群ともに、概念レベル介入群より、感覚・知覚レベル介入群の方が想起後の感情状態がポジティブになる。 仮説2:仮説1の差は、抑うつ傾向群においてより大きい。 結果として、仮説1に関して、抑うつ群で抑うつ感の減少(F(2,56)=6.25,p<.01)、緊張-不安感の減少(F(2,56)=8.33,p<.001)、活気感の増強(F(2,56)=7.78,p<.001)において、非抑うつ群では、疲労感の減少((F(2,58)=4.39,p<.01))、活気感の増強(F(2,58)=2.51,p<.1)で、感覚・知覚レベル介入が概念レベル介入を上回っていた。仮説2に関しては、緊張-不安感(U=63.5,p<.05)、及び抑うつ感(U=68,p<.05)において、抑うつ群の差が非抑うつ群の差を上回っており、支持された。
|