研究概要 |
本年度は、マインドフルネスの概念を明らかにし、効果的な介入を行うための資料を収集するため、二つの実験研究を実施した。第1の研究は、マインドフルネスのメカニズムに関するWatkins(2004)の研究の追試を行った。最近ネガティブな経験をした大学生13名を対象に、概念的反すうと経験的反すうを誘導する群を設定した。各群とも自身のネガティブ経験について20分×3回(1日1回)の筆記を行うことで,反すうを誘導した。そして、こうした反すうの質の違いが、気分の持続に及ぼす影響を検討した。その結果、専攻研究と同様の結果は見られず、群にかかわらず気分の軽減が認められた。被験者の数、筆記内容の誘導の教示について更なる検討が必要であるといえた。 第2の研究は、教示に対する「納得」の程度が介入の効果に大きく影響することを実証するため、教示に対する「納得」の程度が痛み耐性に及ぼす効果を検討した。22名の大学生を対象に、2度のコールドプレッサー課題を行った。無教示で課題を行った後で、このコールドプレッサー課題が、実は健康に非常に有効であるといううその教示を行い、2度目の課題を行わせた。課題終了後、実験はこれで終了という偽の合図を出したうえで、実験者は親密な雰囲気を作り出し、その雰囲気の中で、「ぶっちゃけ」先ほどの教示を信じていたか、納得していたか、といった点に関する4つの質問を行った。この質問の回答から事後的に被験者を「納得していた人」と「納得していなかった人」に分けて1回目から2回目にかけての苦痛耐性時間を比較したところ、「納得していた人」の群がそうでない群と比較して有意に耐性時間が長いことが示された。また、主観的な苦痛も前者では少なく、むしろポジティブな感覚を多く抱いていたことが明らかとなった。 Gross(1998)の指摘にあるように、認知的再評価を促す教示が、プログラムの開発に不可欠であることが示された。
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