本研究は慢性疾患を持つ子どもを対象に、面接を通して病気についての語りを分析する質的検討と、sense of coherenceの日本版子ども用尺度を作成し量的検討を行うという2系列の調査に、三ヵ年を予定している。 本年度は、おもに尺度開発に関わる作業を中心として研究を行った。 昨年度からの作業に引き続いて、子ども用sense of coherence尺度の試訳版を作成し、パイロット・スタディとして乳癌患者を親に持つ子どもを対象とする調査を実施した。さらに、カナダの研究協力者によるバックトランスレーションとその結果に関する検討を経て、子ども用尺度の日本語訳項目については、一応の整理・確定を行った。 また並行して、sense of coherenceの概念や尺度の確認のために、すでに邦訳が出ている成人用のsense of coherence尺度および関連概念の尺度を用いて、600名を越える一般成人を対象とする調査により妥当性などの検討を行った。さらに、これまでの研究においても協力を得ている病院や患者会などとの関連で、乳癌患者やその家族など約90名を対象とし、病気体験の記述や他の関連概念の尺度とともにsense of coherence尺度に関する調査を実施した。 現在、これらのデータを分析しながら、次年度における学会発表等の準備を行うとともに、最終年度における研究計画を検討中である。
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