本研究の目的はわが国の青少年の非行的態度に影響する要因について検討することである。この目的のため、日本とトルコの中学生、高校生、大学生を対象に調査を行った。 結果は、日本の生徒・学生のデータでは自分恥、他人恥、仲間恥という3因子構造が確認された。また、3つの恥意識間の関係では、自分恥と他人恥は中程度の相関を有しており、仲間恥は他の2つとは低めの相関であった。この傾向についてもわれわれの先行研究と同様であった。 上記の3つの恥意識を用いて、属性間の比較を行ったところ、自分恥と他人恥については、日本とトルコでは、全般的にトルコのほうが得点が高い傾向にあった。2つの尺度に共通して、トルコ中学生女子が最も得点が高く、日本高校生男子の結果が最も低かった。 非行許容性の2因子を従属変数とし、恥意識、親子関係、また、価値観について、他者志向享楽志向、努力志向、将来志向の因子を説明変数とする重回帰分析を行った。結果は、不良行為許容性については、まず他人恥、次いで父親からのしつけが高く、享楽志向、将来志向、仲間恥が低いと不良行為が高いという結果であった。 親子関係の良否と子どもの恥意識の高さの関連を、実際の親子を対象に実施した調査に基づいて親の視点から明らかにすることを試みた。結果は、親からみた親子関係の親密さが子どもの非行抑止要因としての恥意識の形成に寄与することを示した。非行的態度の抑制因は価値観や道徳意識などの、いわゆる認知的なものではなく、むしろ情緒的と言いうる、恥意識が重要であるというものであった。
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