がん患者の心理的ストレスとその心理社会的リスク要因を同定することを目的に、以下の研究を実施・分析し、学会などで発表を行った。 1.乳がん確定診断前後の患者の心理的反応について面接調査を行い、特性不安との関係から質的検討を行った。その結果、乳がん患者の多くは検査結果前後に、癌、家族および治療に対する不安や心配といった否定的感情を感じていた。特に、高不安群は低不安群に比べ、否定的感情の表出が高かった。一方、低不安群は、癌に対する楽観的思考や受容といった肯定的感情を抱く人が多く、中には検査前から気分転換をはかるなどの対処行動を行う人もいた(日本社会心理学会、日本心理学会、日本サイコオンコロジー学会で発表)。 2.がん患者の心理的ストレスとコーピングについて、ストレスライフイベント、特性不安、自覚症状の有無を考慮し検討した。その結果、特性不安の高さが心理的ストレスと関連していた。特に初診時では、ストレスライフイベント経験が心理的ストレスと関連していた。さらに、心理的ストレスを感じていると病気に対する前向き思考が低くなることが示唆された(日本乳がん学会で発表)。 3.緩和ケア病棟に転院した患者と家族が抱く転院前後の緩和ケア病棟のイメージについて検討した。その結果、転院までは、患者と家族の約4割が「死に場所」 「想像がつかない」といった否定的な印象を持っているのに対し、入転院後には約9割が「穏やかに過ごす場所」 「スタッフへの肯定的印象」など肯定的な印象に変わることがわかった(日本サイコオンコロジー学会で発表)。 4.これらの研究を実施するに当たり、ストレスライフイベント測定のため、日本語版Life Experiences surveyを開発した(日本心理学会、日本社会心理学会で発表)。
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