研究概要 |
第1研究として,高校生のストレス反応に及ぼすコーピングの効果について検討した。高校生が用いるコーピング方略について,ストレス場面別にクラスター分析を行い,コーピングのパターンを抽出した。その結果,友人関係ストレス場面では,積極的対処群,低対処群,全般的対処群,学業ストレス場面では,積極的対処群,回避的対処群,低対処群のそれぞれ3群に分類された。ストレス経験,コーピングのパターン,およびストレス反応との関係について検討したところ,ストレス経験のレベルやコーピングのパターンによって,ストレス反応に及ぼす影響が異なることが示された。 第2研究では,高校生の対人関係場面における認知のゆがみを測定する尺度を作成するとともに,認知のゆがみがストレス反応とどのような関係にあるかを検討した。対人関係場面における認知のゆがみ尺度の因子分析の結果,「自信欠如」「自己卑下」「他者配慮」「他者排除」の4因子が抽出された。さらに,ストレス反応を基準変数,認知のゆがみを説明変数として行った重回帰分析の結果,「自己卑下」がいずれのストレス反応とも関連性が高いこと,「自信欠如」は「抑うつ・不安」との関連性が高いことが示された。以上の結果から,高校生のストレス反応の緩和するためのカウンセリングや予防的な心理教育プログラムにおいて,対人関係場面における認知のゆがみを変容することの重要性が論議された。 以上の結果を参考にし,高校生用のライフスキル学習のワークブックを作成し,中学校時に不登校経験のある生徒が多く在籍している高校において心理教育プログラムを実施した。
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