研究概要 |
1.日本における臨床心理士の養成において,カリキュラム作成や実習の体制等のシステム構築において,日本臨床心理士資格認定協会の果たしてきた役割は大きい。一方,実際の教育内容や教育方法,スーパービジョンの方法などについての検討はほとんど行われてこなかったと言える。臨床心理士の訓練を修士課程の2年とする日本の訓練システムでは,臨床心理の実践力の基礎と専門家としての意識を培うことが非常に重要であることから,北米のカウンセリング修士課程プログラムから得る示唆が多い。今後,特色のあるカリキュラムを細かに検討していくことに加え,訓練を受ける学生側の意見も加えることも有益であろう。 2.臨床家の共感的スキルを高めるための教育・訓練プログラムを開発し,その効果を検証することを目的として3件の実験を行った。その結果,カウンセラー自身の「落ち込み体験」等を想起してもらい,それをロール・プレイ場面に活かすという体験が最も効果的であると判断された。しかし,被験者数の確保とファシリテーターの訓練,評定者間での一致度の向上や,新しい評定尺度の開発が今後の課題として挙げられた。 3.5名の臨床家に心理面接場面のビデオ録画の視聴を求め,インタビューを行って,被験者の発話内容・過程を分析し,参加者の概念化能力の特徴を抽出を試みた。参加者の臨床経験による違いが指摘された一方で,臨床経験の算出方法やデータの分析方法についての課題が提起された。 4.10名の被験者を対象に半構造化面接を実施して,現職カウンセラーの職業的転機について探索的研究を行った。その結果,多様な職業的転機,職場環境や勤務する領域による違い,インフォーマルなサポート集団の役割等が指摘されると共に,大学院教育をより実践的なものに変えていく必要性も示唆された。
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