1.目的 本研究では、母親の対人的楽観性が幼児の対人行動に対していかなる影響を及ぼすか、その因果関係を明らかにすることを第一の目的とする。また、母親の対人的楽観性の変容が幼児の対人行動の改善にとって、いかなる効果をもたらすかについて検討を行うことを第二の目的とする。 2.方法 <対象者> 幼稚園児、男女各10名程度、および各幼稚園児の母親を対象とする。 <手続きの概要> 各幼稚園児の対人行動の発達プロセスを、ビデオ録画および自然観察の分析などによって比較し、母親の対人的楽観性が幼児の対人行動に及ぼす影響について検討を行う。さらに、各幼稚園児の母親に対し個別面接を行い、対人的楽観性の変容をはかる。 本研究は昨年度より継続して実施しているものであり、特に今年度は対象となった幼稚園児の母親に対し個別面接を行った効果についても検討を行った。研究にあたっては、対象となった幼稚園児および各幼稚園児の母親に対して、十分に倫理的配慮を尽くした。 3.結果および考察 研究の結果、母親の対人的楽観性が幼児の対人行動に影響を与えていることが明らかになった。また、母親の対人的楽観性を変容させることによって、幼児の対人行動が改善されたこと、すなわち母親の対人的楽観性の変容が幼児の対人行動の改善にプラスの効果をもたらすことが明らかになった。さらに、幼児の対人行動を改善するうえで、母親への援助などを含む予防的・開発的援助が重要であることが示唆された。 心理臨床実践においては、さまざまな制約により、幼児と直に接することなく、幼児の問題を母親のみを介して解決せざるを得ないケースも少なくない。母親の対人的楽観性を変容させる本研究のアプローチは、そのようなケースにおける介入の可能性を示したものとして意義をもつと考えられる。
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