注意の最適制御戦略を探る目的で、個人差を梃子にして能動的注意制御能を調べる実験を行った。 1)年齢による前頭葉機能の衰えに伴う能動的注意機能低下を調べることを目的として、注意の捕捉を起こしにくい視覚probe検出課題を工夫した上で、これと聴覚課題とを組み合わせた二重課題事態での空間的注意配分を、若年者と高齢者(両者は能動的注意機能に差があると想定される)で比較したところ、高齢者では、若年者と比較して全体として検出成績が低下していたことに加え、聴覚入力が左耳からの場合、右耳からの場合と比較して、probeの見落としが増えた。これは、左耳からの入力では左半球で言語課題を処理することと右半球で刺激を検出することが相互に干渉したためだと解釈できる。 2)作業記憶の個人差と空間的注意機能の個人差との関連を分析する目的で、2種類の作業記憶容量(言語性と視空間性)を測定し、その成績により被験者を二群に分け、群間で外発的注意制御及び内発的注意制御機能を比較した。その結果、能動的注意の維持と言語性作業記憶容量が関係することを伺わせる知見を得たが、全体としては、空間的注意制御と作業記憶の容量とは関連しなかった。これは、予想しなかった結果であった。 さらに、予備的な実験として、attentional blink実験での干渉抑制と注意容量配分を調べる実験を行い、両者がT1とT2のSOAに対し、異なる変化パターンを示すことを示唆する結果を得た。
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