研究概要 |
本年度は,本研究の第3の目的に関する実験を行い,これまでの総括として報告書を作成する。 実験1 偶発記憶に及ぼす過去の出来事における人物情報の存在の効果を検討した。大学生を対象として,記銘語から過去の出来事を想起させる方向づけ課題を行い,その後,偶発自由再生テストを実施した。そして,その際,想起した出来事に人物が含まれていたか否かを参加者に判断してもらい,その判断に基づいて再生率を比較した。その結果、想起した過去の出来事に特定の人物情報が含まれていた場合が、含まれていない場合よりも再生率が高かった。この結果は、人物情動の差異性が高いことによって,人物情報が有効な検索手がかりとなることを示唆した。 実験2 実験1では、人物情報が有効な手がかりとなる可能性が示唆されたので、実験2は、想起された人物に対する好意度(快,中立,不快)が、偶発記憶に及ぼす効果を検討した。大学生を対象として,記銘語から人物を想起させる方向づけ課題を行い,その後,偶発自由再生テストを実施した。そして,その想起した人物に対する好意度を6段階で評定してもらい,その好意度による再生率を比較した。その結果,想起した人物に対する評定が快及び中立である場合が,不快である場合よりも再生率が高かった。ただし,人物に対する情動処理にも,個人の情動知能の水準が関連していると予想したが,情動知能による再生率の違いは認められなかった。 報告書の作成 過去4年間の研究を総括して、報告書(冊子)を作成した。その内容は、以下の6章から構成されていた。1)本研究の目的と意義,2)情動知能の測定尺度の開発,3)情動知能と適応,4)時間次元(過去と未来)と記憶,5)情動知能の個人差と記憶,6)情動的精緻化と記憶。
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