研究概要 |
1.スタティックタッチ 棒を振ることで,目を閉じていても棒の長さを知覚できることが知られている(ダイナミックタッチ)。一方で,棒を振らなくても,静止保持することで長さ知覚が可能との報告がある(スタティックタッチ)。棒を振るということが知覚にとって本質的であるか否かを明確にすることは,知覚のメカニズムを理解する上で必須である。 そこで,本研究では,知覚実験と棒の挙動計測を併せ行うことにより,スタティックタッチによる長さ知覚の可否を明確にする実験から着手した。 結果の概要を以下に記す(学会誌への投稿準備中)。 (1)静止保持にもかかわらず無意識に棒が大きく動いていた1名を除いて,被験者22名中21名が棒の長さを知覚できなかった。スタティックタッチでは棒の長さを知覚できないこと,そして,長さ知覚には一定レベルの棒の動きが必要であることがわかった。 (2)実際の棒の長さとは異なるものの,被験者が回答した長さと,静止モーメントおよび慣性モーメントモデルの間に相関がみられた。棒の挙動解析により,棒の動き(角加速度)が比較的大きい被験者は慣性モーメントを,小さい被験者は静止モーメントを,長さ回答の指標としているとの知見を得た。 2.ダイナミックタッチ スタティックタッチの実験を通して,棒を振るということが知覚にとって本質的であることを確認した。 そこで,(A)手関節を中心に鉛直方向に棒を振る,(B)手関節を中心に水平方向に棒を振る,(C)肘関節を中心に垂直方向に棒を振るという3種類のダイナミックタッチを取り上げ,知覚メカニズムの解明を進めた。 現在,被験者22名について,知覚実験と棒の挙動計測実験を完了したところである。 今後,各被験者の棒の挙動計測データの解析を進め,人が一次的に知覚可能と考えられる筋トルクや棒の最大振り角などをパラメータとした知覚モデルの構築を目指す。
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