研究概要 |
瞬目は,目を保護するために反射的に生じるだけではなく,心理過程とも関連しながら生じている。瞬目は非侵襲的に記録できるので,心理過程を探る生理指標として自動車運転などの場面に応用の可能性がある。われわれは,瞬目には持続性と一過性の変化があることを提唱し(福田,早見,志堂寺,松尾,2007a)いくつかのビジランス課題における瞬目活動をとらえていった。 一過性の瞬目変化に注目すると,刺激提示直後に瞬目が頻発しやすいことが確かめられているが,刺激間の時間間隔(ISI:Inter-Stimulus Interval)と刺激提示位置が瞬目発生にどのような影響を及ぼすかについてはまだよくわかっていない。そこで中心部あるいは周辺部に3種類のISIで提示される一桁数字を検出させる際の瞬目パターンの変動について調べた。0から9の1440個の一桁数字(持続時間200ms)を次々にコンピュータ画面の中心部か周辺部に200ms,400ms,800msのISIのいずれかで表示した。数字1の提示確率は0.2で,実験参加者は数字1が提示されたときできるだけ速くボタンを押すよう求められた。刺激前1000msから刺激後2000msまでの瞬目を数え,瞬目時間分布(TDB:Temporal Distribution of Blinks)に表した。 刺激が中心部に提示されたとき,200msや400msの短いISIでTDBは,ターゲット刺激の後,瞬目率ピークが出現したのに対し,長い800msのISIでは,どの刺激の後にも瞬目率ピークが出現した。周辺刺激に対しては,瞬目頻度は200msや400msの短いISIで減少し,ボタン押しをしないとき瞬目率ピークが消失した。これらの結果は,800msのISIではどの刺激の直後でも瞬目が生じやすく,200msや400msのISIではターゲット刺激を検出したときだけに生じやすいことを意味しており,瞬目率ピークが選択的注意と関連していることを結論づけるものである。
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