研究概要 |
著名なPosner, Boies, Eichelman,&Tailor(1969)の文字マッチング実験では形態的一致判断の反応時間(RT)は2文字のISIとともに増大したが,水野(2005),水野・松井(2005),松井・水野(2005)では短縮した。本研究ではこの不一致の原因を調べるためにMizuno, Matsui, Bellezza, &Harman(2005)の考察をもとに検討を行った。 1.刺激の呈示位置の影響の検討 Posnerら(1969)では2文字の呈示位置が視角10度,同一箇所と実験毎に異なり,これがRTを歪めた可能性があった。そこで水野・松井(2006)と松井・水野(2006)(以上認知心理学会)はそうした影響の少ない隣接呈示の実験を日米で行った。その結果,日本語母語者でも英語母語者でも形態的一致・音韻的一致のRTが短縮することが明らかとなり,不一致の原因がPosnerら(1969)の呈示位置の不備にあった可能性が示された。 2.形態・音韻コードへの依存度の日米差の検討 水野・松井(2006)と松井・水野(2006)(以上認知科学会)は音韻コードの利用を抑制できる変則マッチング実験を考案・実施した。その結果,音韻コードが利用されないと,日本語母語者の形態的一致のRTが変化しないが英語母語者のそれは有意に短縮することが明らかとなり,通常の表音文字処理で,日本語母語者は形態コード,英語母語者は音韻コードに大きく依存していることが明らかとなった(1,2のまとめが水野・松井・Bellezza,2007(印刷中)。 3.RT短縮の原因の検討 水野・松井(2006)と松井・水野(2006)(以上心理学会)はRT短縮の原因が符号化完了時間のためかISIが短い時の注意移動の困難度のためかを検討し,後者が原因であることを確認した(投稿中)。
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