研究課題/領域番号 |
18530578
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
井上 雅勝 武庫川女子大学, 文学部, 准教授 (00243155)
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研究分担者 |
松井 理直 神戸松蔭女子学院大学, 文学部, 准教授 (00273714)
蔵藤 健雄 琉球大学, 教育学部, 准教授 (60305175)
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キーワード | 実験系心理学 / 言語学 / 認知科学 / 文理解 / 日本語 |
研究概要 |
平成20年度は、18-19年度までの研究成果(1.全称量化表現を含む文では解釈の曖昧性を有する文でみられるガーデンパス効果が低減することを見いだした心理実験、2.この知見を基礎とした談話表示理論(DRT)の枠組みに基づく文の漸進的意味処理モデル(incremental-DRT)の提案、3.モデルに基づく予測の実験的検証)を踏まえ、特に3.の実験研究を充実させることによって、モデルの妥当性や必要な修正課題などを検討した。その結果、まず当初の予測通り、主語だけではなく目的語を全称量化した場合にもガーデンパス効果が低減するという知見が得られたが、一方、主語・目的語の双方を量化(全称量化および「ほとんどの」のような部分的量化)した場合には、再度ガーデンパス効果が上昇するという結果も見られた、このことから、量化表現の理解には認知的処理負荷に基づくなんらかの制限があることも示唆された。これと並行して、名詞句タイプ、照応といった意味論的・語用論的情報が文理解過程においてどのような役割を果たすかについての実証的研究も行ない、こうした情報の処理と上のモデルとの整合性を検討した。 また、以上の研究成果のうち、実験研究結果を研究代表者(井上)が中心となって日本心理学会、日本認知科学会、日本認知心理学会等で公表するとともに、モデルの紹介および今後必要となる研究課題について、研究分担者(蔵藤・松井)を中心に日本心理学会シンポジウムで発表を行なった。 最後に、本年度は神戸松蔭女子大学において研究会合を開催して研究全体の総括を行ない、今後の研究成果発表について検討すると共に、3ヶ年の研究によって新たに示された課題を解決し、モデルの精緻化を図るためには、本研究課題の枠組みよる研究の継続が必要であることもあわせて確認された。
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