研究概要 |
今年度は,初年度であるので,まず物品の購入等による研究環境の整備を行った。 また,8月の日本認知心理学会第4回大会に参加し,情報収集や交換を行い,研究計画を最終チェックした。 今年度は,複合文脈,BGM文脈,背景色文脈についての実験を行った。実験は,研究代表者と分担者とで分担した。実施にあたっては,それぞれの研究機関で,実験補助者をアルバイターとして雇用した。 複合文脈:比の法則で新近性効果が生じる条件下(IPI=RI=30秒)で,複合文脈変化の効果を調べた。その結果,複合文脈変化は新近性効果に影響しないが,爆発音による局所的文脈変化は影響することを見いだした。この実験は,Isarida & Isarida(2006)の後継実験である。 BGM文脈:BGMとして使用する楽曲の熟知価が,BGM文脈依存効果に影響するか否かを調べた。その結果,熟知価の高低にかかわらず,BGM文脈依存効果が生じることを見いだした。 背景色文脈:他の環境的文脈が偶発的文脈として機能するのに対して,背景色は局所的文脈として機能するとされている。これまでの実験で,1背景色につき1項目で継時提示する場合,(1)5項目以上が同じ背景色で提示されると,文脈依存効果が消失すること,(2)背景色で群化されないことが見いだされている(Isarida & Isarida, in press)。そこで,3項目あるいは6項目を1背景色のもとで同時提示した場合に,文脈依存効果が生じるか否かを調べた。その結果,(1)いずれの条件でも,背景色文脈依存効果は生じなかった。(2)背景色による群化は明確に生じないが,同時提示された項目相互の群化がより顕著であった。(3)3項目条件では,背景色手がかりが存在するときに,再生数と群化スコア(ARC)とに有意な相関が得られた。 以上の実験結果は,さらに追試や条件分析を重ねることで,確定していく必要がある。
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