本研究は、各学校において、自らの教育活動をふり返り、改善課題を明確化するという「自己評価」機能を促進させるために有効な組織的要因を解明することを目的としている。本年度は、学校改善に関する従来の研究のレビューを行い、それらの中からとくに学校改善過程のケーススタディに注目して、学校の「自己評価」機能促進要因を捉えるための視点や方法について分析を行った。そのうえで、昨年度から継続的に調査を行っている学校において訪問・観察調査を行い、学校改善を推進しているキーパーソンにインタビュー調査を実施した。様々な立場で学校改善に関与してきた教員各自の語りをそれぞれ文字に起こした上で、学校改善の過程を記述し、そこに学校の自己評価機能とその促進に関わる組織的要因がどのように見出されるかについて検討を行った。また、事例校を増やすために、数年間にわたって教育活動の継続的改善が進められていると認められる学校を新たに訪問して観察調査を実施した。それらの学校については引き続きインタビュー調査に着手するべく準備を進めている。こうした調査結果に基づいて学校改善が進行する具体的な過程を描き出し、そこにおける組織的な要因を導き出すことが次年度の課題となる。このように継続的な事例調査に基づく学校の自己評価機能に関する研究はこれまで十分に行われておらず、重要な意義を有している。
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