本研究は、フランスにおける1990年代以降の教育地方分権化政策の下で、各学校の自律性確立が中央・地方の視学制度の評価・支援機能の拡充によって格段に進展し、独自の教育改善サイクルを形成しつつある動向を理論的かつ実証的に明らかにすることを目的としており、初年度にあたる本年は、まず2002年度から学校に対する支援策として行われている「ミッション」の策定とその評価・支援行為がどのような形態・方法で行われており、具体的にいかなる成果を挙げているかについての実態を、文献・HPからいくつかの中等学校の事例を取り上げて分析した。また、学校評価の実施において査察制度を実験的に試みた実績のあるリール大学区に注目し、文献・研究調査等からその問題点を明らかにした。 次に、1990年から実施されている大学区評価に関して、既に実施された13の大学区評価のうち6大学区の評価報告書を分析し、その実施方法、内容、具体的プロセスを明らかにし、分析枠組みを検討した。これは次年度に行う相互比較の基礎作業となるとともに、教育行政の中央-地方関係の変化が学校改善サイクルの形成・展開にいかなる影響を及ぼしたかを考察するための予備的考察に位置づく。 さらに地方視学と学校管理職の養成・試補研修を行うために新設された国立教育経営学院(ESEN)の研修プログラムを本国より入手し、分析を開始した。次年度に予定する実態調査と受講生に対するアンケート調査の予備的考察も合わせて行った。
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