本研究は、フランスにおける1990年代以降の教育地方分権化政策の下で、各学校の自律性確立が中央・地方の視学制度の評価・支援機能の拡充によって格段に進展し、独自の教育改善サイクルを形成しつつある動向を理論的かつ実証的に明らかにすることを目的としており、二年目にあたる本年は、まず行政全体の改革動向をおさえ、その影響関係から教育行政の特質を明らかにするために、2001年から導入された新政策評価制度とその根幹を成す予算組織法(LOLF)について検討した。公共政策全領域にわたって業績達成度評価を受けることになったが、公教育に関しては、英米にみられるような競争原理や市場原理とリンクさせる方向性は採っておらず、学校の自律性と責任の拡大という観点から成果向上を図ろうとしていることを見出し、本研究の視点との一致点を抽出した。 次に、1990年から実施されている大学区評価に関して、全13の大学区評価のうち未検討の7大学区の評価報告書を分析し、その実施方法、内容、具体的プロセスを明らかにし、分析枠組みを検討した。これは、教育行政の中央-地方関係の変化が学校改善サイクルの形成・展開にいかなる影響を及ぼしたかを考察するための予備的考察に位置づく。 さらに地方視学と学校管理職の力量について日本の現状と比較検討するために、広島市教育委員会事務局に行き、指導主事(企画担当)からヒヤリング調査を行った。広島市は学校評価政策の企画立案と実施において指導主事が主導的役割を果たしており、その実態と、その力量育成のための具体策について調査した。これは来年度の比較検討の素材となるものである。
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