本年度は、(1)日本の公教育領域における新自由主義教育改革を原理的に正当化することを目的としていたと見られる教育基本法の全部を改正する法案とその審議過程の分析、(2)アメリカにおける新自由主義教育改革を基礎付けている連邦法であるNo Child Left Behind Lawにつき、2002年からの施行以降浮上してきた問題点の整理、分析、および、(3)新自由主義に基づく子ども関連法制の改革の世界的動向の中心にいると見られる世界銀行の教育政策の分析のための基礎資料集めに集中した。(1)については、2006年4月に政府が国会に提出した「教育基本法の全部を改正する法案」および民主党が提出した「日本国教育基本法案」の2つの法案の分析を逐条的に行ない、特に、子どもとの相互的な人間関係の学校における保障を意味していると解される教育基本法第2条(教育の方針)およびそれを受けて教育の直接責任性を規定した第10条に対して加えられた修正が、教育の新自由主義に基づく改変のために必要とされる国への無定量の教育内容に関する決定権限を付与することを内容としていることを明らかにした。(2)については、NCLBの実施状況に関する先行研究をフォローし、その成果を論文として公表した。(3)については、アメリカ比較国際教育学会に参加し、世銀の教育政策が世界の発展途上国に与えた問題点の先行研究をフォローし、その他、基本的文献を収集し、分析を開始した。
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