新自由主義という政治原理に基づいて展開されている子どもの関連法制の変容を子どもの権利という観点から検討することを目的とする本研究の第3年度にあっては、第2年度に、新自由主義教育改革を基礎づける理論である新制度派経済学に基づく主人・代理人理論および「新しい統治」論の検討をほぼ終えたことを踏まえながら、それの教育人権および子どもの権利に基づく検討へと作業を移行させることになった。具体的には、次の3つのことを行った。(1)日本における新自由主義に基づく教育行財政改革を、戦後教育行財政システムの歴史的展開のもとに位置づけ、1947年に成立した旧教基法型ガバナンスが、1958年以降に展開した地方教育行政組織の中央教育行政組織への吸収によるガバメントへと移行し、新自由主義教育行財政改革は、ガバメント化した教育行財政を主人・代理人に基づくガバナンスへと移行させようとしていることにその特徴があることを明らかにした。(2)アメリカにおける新自由主義教育改革をリードしてきたNo Child Left Behind Actをめぐる教育法的検討の状況をサーベイし、行政法を用いてのNCLB回避型裁判が教育法裁判として本格化していない中で、教育財政改革訴訟がアメリカ新自由主義教育政策をコントロールする訴訟形態となっていることを明らかにした。最後に、日本における教員管理をめぐって展開している諸事件をアメリカとの比較の中において検討し、教育人権ならぬ市民的自由に基づいて展開している教師の自由保障が日本においては最低限保証ラインとなることを明らかにした。
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