新自由主義という政治原理に基づいて展開されている子どもの関連法制の変容を子どもの権利という観点から検討することを目的とする本研究の最終年度にあっては、(1)過去3年間に明らかにした新自由主義教育改革を構成する法規範および制度原理、ならびに、それが子どもに与えている影響を国連子どもの権利条約に基づいて分析し、暫定的な評価を行うとともに、(2)新自由主義教育改革によってもたらされる国家権力の流れ方の変容に加えて、国家権力の変容によって実現されようとしている学校体系の変容に関する分析を、東京都における高校教育改革を素材にして行い、次のステップのための準備的作業を行った。(1)については、分析の対象を保育に拡大し、新自由主義に基づく改革が、子どもの成長発達に不可欠な大人との間の相互的な人間関係の保障を困難にしているとの分野横断的な特徴を明らかにし、これゆえに、子どもの権利条約に規定された子どもの人間としての尊厳、子どもの意見表明権、および成長発達権の実現を妨げていることを明らかにした(研究成果の公表は来年度の予定)。(2)については、普通教育年齢の18歳から15歳への引き下げが新自由主義によってもたらされる学校体系の変容の中核を構成し、それゆえに、国家による競争の組織が低年齢化し、それが、子どもの権利に対して否定的に働いていることを明らかにした。研究期間の4年間の間に、国連子どもの権利委員会による第3回日本政府報告審査が行われる見通しであったが、終了直後に行われることとなり、本研究によって得られた知見と、国連との評価との比較を行えなかった。が、それは関連する課題として追求する予定である。
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