研究概要 |
本年度に実施した研究作業の概要は以下のとおりである。 第一に,臨時教育審議会がその改革案を検討するにあたり,重要な先行事例とした1971年の中央教育審議会答申(いわゆる46答申)関連資料の収集および分析を行った。また,臨教審の審議過程で,46答申がいかなる評価を受けていたのか,改革案の作成に際しどの部分が引き継がれたのか,46答申の教訓をどのように審議に生かしたのかについて検討を行った。 第二に,国立公文書館所蔵の臨教審関係資料の閲覧を行った。これは昨年度からの継続作業であり,総会速記録の閲読と必要な部分の抜粋作業(パソコン持ち込み)を行った。これと平行して,各総会間における運営委員会や部会の審議状況について調査を行った。今後,これら内部資料と,既往公刊資料との突き合わせ作業を行う必要がある。 第三に、臨教審当時の日本の中曽根内閣期における(広義の)行政改革と,同時期における米国のレーガン改革,および英国のサッチャー改革との比較検討を行った(邦語文献中心)。その結果,次のような検討課題が浮き彫りになった。同時期は,これらの国でいずれも戦後福祉国家の見直しが提起されていたが,その見直しの史的性格をより鮮明に捉えるためには,それ以前の時期までに形成・確立した福祉国家の特質を明らかにする必要がある。この点は,戦後日本の教育改革論における,70年代(46答申)=福祉国家確立期,80年代改革論=福祉国家転換期との比較研究を深めるためにも重要な作業課題である。なお,46答申が提出されて間もなく,折しも日本型福祉の見直し論が出てくるが,この見直し論議と80年代の行革との関係(その連続性と異質性)についても検討する必要がある。
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