研究概要 |
本研究は、戦後日本の福祉国家体制のもとで形成された教育行政・教育政策システムが,その後の改革によって,どこまで,そしてどのように変容していったのかを明らかにしようとしたものである。政府による戦後福祉国家の再編とそれに連動した教育改革は,大きく1980年代と1990年代後半の2回にわたり試みられた。80年代には,中曽根内閣における臨調行革とその教育版である臨教審が改革に取り組み,90年代後半以降においては小泉内閣の構造改革によって教育改革が進められてきた。本研究ではこれら一連の過程について,史資料の調査分析を通して再検討を行った。主要な研究成果は以下のとおりである。 第1に,80年代の臨時教育審議会における改革審議過程について,審議会の内部資料調査をもとに再検討を行った。具体的には,国立公文書館に所蔵されている審議関係資料(総会速記録,運営委員会資料等)の閲覧・分析を行った。その結果,臨教審の改革構想は,内容面では中教審46答申(1971年)から多くのアイデアを得ており,その点で通説がいう90年代以降との連続性だけでなく,それ以前の70年代との連続面もあること,さらに改革の実施過程としては80年代と90年代後半期との間には一度断絶があることが明らかとなった。 第2に,90年代後半期以降の改革過程を分析することにより,臨教審改革の歴史的性格を明らかにした。すなわち,通説が強調する臨教審と90年代後半期との連続性は,改革構想における個々のアイデアそのものというよりも,戦後福祉国家の転換・再編論という政治的文脈に求められるべきなのである
|