研究の第1年度として、先行研究の検討、日本国内での文献・情報収集、米国及び欧州での現地調査を行った。米国においては、ニューヨーク州立大学アルバニー校(2006年7月)及びワシントン大学(2007年2月)を訪問し、各機関におけるカリキュラム開発とIRの連携にかかわる実態調査を実施した。ニューヨーク州立大学については、インスティチューショナルリサーチ(IR)の専門部署及びカリキュラム評価の担当者へのヒアリングを行い、大学における教育の質向上やカリキュラム開発に有効な評価指標・データ・情報、カリキュラムの開発に資するデータ及び情報リソースとしてのIRの特質、カリキュラムの開発とIRとの連携システム等の特質を明らかにした。その成果の一部を、研究論文「データ主導による教育改善のシステムに関する考察-米国ニューヨーク州立大学の『アルバニー教育効果測定モデル』を手がかりに-」(『名古屋高等教育研究』第7号、2007年)にまとめた。ワシントン大学については、教育の質向上及びカリキュラム開発の支援部門を訪問し、データに基づく教育改善のシステムについて調査を行った。これにより、同大学におけるカリキュラム開発とIR部門との連携に関する第二回調査(平成19年度に予定)の基盤をつくった。欧州においては、IRの専門学会(European Association for Institutional Research、ローマ、2006年8-9月)に参加し、欧州各国の高等教育機関における教育の質向上や教育成果の評価、プログラム開発をめぐる動向の把握を行った。以上の文献・情報収集及び現地調査の成果をふまえ、大学におけるカリキュラム開発に有効な視点を、研究代表者及び研究分担者が開発スタッフとして係わった『ティップス先生のカリキュラムデザイン』(名古屋大学高等教育研究センター、2007年)に反映した。
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