研究の第2年度として、第1年度の成果をふまえ、米国及び豪州での現地調査を行った。米国では、ワシントン大学を訪問し(2007年6月)、データに基づく教育改善のシステムを調査した。とくに、インスティチューショナルリサーチ(IR)と部局におけるカリキュラム開発との連関に関する実態調査を行った。とりわけ、IRの専門部署及びカリキュラム評価の担当者へのヒアリングをもとに、大学における教育の質向上やカリキュラム開発に有効な各種調査の内容、評価指標・データ・情報、カリキュラムの開発に資するデータ及び情報リソースとしてのIRの特質、カリキュラムの開発とIRとの連携等の特質を明らかにした。その成果の一部を、研究論文「米国の大学におけるカリキュラムマネジメントーワシントン大学シアトル校のデータに基づく教育改善システム-」(『季刊教育法』第154号、2007年)にまとめた。豪州では、シドニー大学の教育の質向上及びカリキュラム開発の支援部門を訪問し(2007年11月)、データに基づく教育改善のシステムに関する調査を行った。その成果の一部を、日本教育制度学会で発表し(「大学におけるデータに基づく教育改善システムの構築にむけた組織的連携-米国・豪州の事例を手がかりに-」)、さらに研究論文「豪州シドニー大学における『原理と実践』に基づく教育改善の取り組み」(『鹿児島大学教育学部紀要』第59巻、2008年)にまとめた。本研究では、IRの組織的機能だけではなく、カリキュラム開発を含む教育改善の組織的な連携体制についても解明した。ことに、米国の大学では、IRの機能と「教職員の資質向上(FD)」や「計画及び評価」という機能との連携をはかりながら、根拠データに基づいた部局レベルの教育改善を推進していることが実証的に解明された。以上の現地調査の成果をふまえ、2ケ年の研究で得られた知見を最終成里報告書にまとめた。
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