ドイツの大学改革推進団体の中で、特に主要であると認識されている高等教育開発センター(Centrum fur Hochschulentwicklung)及び高等教育情報提供機構(Hochschul-Informations-System GmbH)の高等教育改革への関与について調査研究を推進した。CHEの各種事業を通覧すると、大学の予算、人口の動態、高等教育の市場化、授業料の徴収、目標合意書の締結等、大学の直面する課題について、特定の改革方向を前提とする調査研究を実施する状況を見て取ることができる。一方、HISの関心もCHEとおおむね同様であるといってよいが、調査と応用を一応の区別を設けているところが重要な相違点であるといえる。従って、HISの調査研究は、客観的なデータ及び分析結果の提供を重視する。現在までのところ、全体的な傾向と同一視することはできないが、両者の異同を指摘することができる。CHEは変革推進団体であるベルテルスマン財団と親和性があるのに対して、HISは有限会社(GmbH)の体裁をとるものの連邦及び諸州の支援の下で事業を推進する。CHEの主要な課題への取り組みをリードするツィーゲレ氏が経済学者であるのに対して、HISにおいて研究部門の責任者となっているレスツエンスキ氏は哲学者である。CHEの調査研究は新公共経営の導入を重視するのに対して、HISの調査研究は同様の視点を考慮しつつ現状との連続性を考慮する傾向がある。両者は本研究の対象とする大学改革推進団体であり、政府及び大学の信頼度が高いという共通性があるとはいえ、組織の特性により同一の局面で有効に機能するのではないようである。利用する立場にある政府と大学の選択があるのだう。
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