高校における職業教育行財政制度の法的根拠となる産業教育振興法改正により、高校職業学科の施設及び設備の教育条件整備は、都道府県の行政に委ねられることになった。この制度改革の主旨は、これまでのように使途・費目を指定した国庫補助から、各分野の行財政を地方公共団体への交付税でまかない、それぞれの自立性・独自性を高めることにより、地方分権を推進することであった。こうした取り組みの一環として、教育行財政、とくに高校職業教育の財源となってきた産業教育振興法による補助規定は廃止され、各地方公共団体の裁量となった。 本研究の目的である地方自治体の財政制度の実態面を客観的に把握するために、既に1980年代に地方分権化が先行した中学校の財政制度に関して調査を行い、高校職業教育における行財政制度との比較を行うこととした。今年度は東京都・名古屋市・横浜市・和歌山県の事例を調査した。調査の結果は、技術教育研究会及び産業教育研究会において、職業教育研究者・高校職業学科の教員などの参加・協力を得て、検討・協議した。以下に結果の特徴点を示す。 (1)地方財政の仕組みやその運用には、当該自治体が地方交付税の交付を受けているか否かによって異なる。 (2)自治体の学校予算編成の基準は、政令指定都市では「配当基準」に、その他の市では「単位費用積算基礎」により設定されている。 (3)条件整備の現実的な整備基準となる「教材・教具の細目に関する基準」は、自治体によってその設定の有無が異なる。
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