産業教育振興法の2度にわたる改正によって、施設・設備とも国庫補助が廃止されたことにより、高校職業教育の教育費の主な負担は都道府県レベルの地方自治体が担うこととなった。職業教育費は国庫補助の一部を引き継ぐ「安全・安心な学校づくり交付金」制度のよるものをのぞき、地方交付税にょるものとなり、都道府県独自の行財政制度へと変換した。 こうした情勢の中で、和歌山県と鹿児島県の職業教育費の変化を調査した。改正間もないこととこれまでの実績に応じた予算配分が行われていることが明らかにされた。特徴的なことをまとめれば以下の通りである。 (1)産振法改正以降の産業教育費は、国の財政措置との一部はその他の助成制度によって継続されているものの、その大部分は交付金による一般財源へと移行し、大幅な予算減が断行されている。 (2)和歌山県・鹿児島県の調査によれば、各年度の予算額は当該年度の事業内容(例えば大規模な実験棟の改修などの有無)による変動が大きく、産振法改正の前後による予算額の増減は確認できなかった。両県においては2008年度予算では特に職業教育費を減額するという方針は無いとの県教委担当者の見解が得られた。 (3)三位一体の改革では廃止された国庫補助は地方交付税による代替をもって維持することとなっているが、各都道府県では一般財源化された予算が従来通り高校職業教育のための施設設備に当てられる保証はない。設置者負担主義、地方分権主義が原則であるとはいえ、現実問題として、地方交付税制度の下では、地方財政の不均衡により、高校職業教育の物的条件整備がおろそかになることが懸念される。
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