本年度は、当該課題研究最終年次にあたり、以下の諸点に関する研究に従事した。 1.米国各州の教員人事・評価制度中、特に近年注目される「同僚教員評価制度」を中心にその先進的地域(オハイオ州、カリフォルニア州)の詳細な制度実態の把握。 2.関係判決例の分析を通した基本的判決原理の整理。その結果、次のような知見を得ることができた。まず、「同僚教員評価制度」に関しては全米50州中未だ特定州のみでしかその存在が確認できないものの、確認できる諸州においては、一定の成果を上げており、同僚による支援的評価活動の有効性が明らかとなった。特に、カリフォルニア州ポーウェイ統合学区の事例においては、制度全体を通して、同僚教員による評価と校長による評価がうまくバランスを取っており、注目される。とりわけ、終身教員調停プログラムにおいて顕著であるが、複数の人々(評価チーム)による評価を通して評価の客観性や公正さを確保しようとする姿勢は注目に値する。これらの諸点は、先発部隊のオハイオ州トレドやコロンバスと比べても、優れている点であり、高く評価されよう。 次に、関係判決例の分析では、その多くが評価の妥当性に関するものに集中しており、司法は「評価基準の具体性」と「明確な根拠性」を強く求めていることが判明した。加えて、評価に関する多様な評価手続の設定は、被評価者の評価に際しての諸権利を保護するにとどまらず、評価者自身の権利をも保障する機能を有していることが明らかとなった。
|