(1)=平成18年度・19年度に研究してきた作業を下にして、「学習の共同化モデル」を開発するためのまとめを行った。その結果として、(イ)制度及び制度的性格としての学級の変遷過程を解明し、学級における「近代」と「現代」をめぐる論点を抽出した。(ロ)学習の共同化の課題となる学習集団論の範疇を検討し、代表的な理論と実践における学級理解の特徴を解明した。特に、「学びの共同体」論と学習集団論を考察し、共同化のための枠組みを解明した。さらに習熟度別学習や特別なニーズ教育における学習の共同化論の論点を解明した。(2)=(1)の成果を日本教育方法学会第44回大会において公表し、研究の最終的なまとめの参考に供した。さらに、最終のまとめの内容を確認するために、広島県内の小学校において授業研究と調査を行った。子どもが生活し学ぶ空間として学級解体論ではなく、学級を基盤に据えることの意義、さらに共同化のための多層の編成も考慮すること、また授業における自治のあり方も視野にいれることによって、学習の共同化の基盤を確かにする意義を明らかにすることができた。(3)学習の共同化モデルを構成する要素として、(1)共同化の内容=知の再定義を目指す共同、子どもの生活に裏打ちされた見え方の表現の編み直し、権威ある知の下での統一の克服と知的相対主義の克服、(2)共同化の方法=知を再定義する学習集団の担い手を育てる方法と差異を承認しつつ共同化する指導方法、(3)共同化のシステム=ケア・自己と他者への基本的信頼感・自治の追求(リーダー、生活集団と学習集団)を導き出し、これらが共同化モデルの枠組みであることを理論的・実証的に解明することができた。この枠組み自体が、これまで未解明であった共同化のためのモデルであり、教育実践に具体化することが可能となる。
|