本研究は、幕末維新期に来日した外国人が平田篤胤の古道学に関心を持ち、篤胤の著書を購入・収集・研究に至った経緯ならびに研究方法・内容・成果などについて、国内史料・海外史料の収集・検討により、歴史的、思想的にその実態を明らかにし、我が国の教育の近代化過程を考えることを目的としたものである。平成19年度は、昨年度に引き続き、ケンブリッジ大学所蔵のアーネスト・サトウの関係史料を閲覧するとともに、ドイツの外交官ケンペルマンの学歴を調査するために、ケンペルマンが修了したギムナジウムのあるミュンスターで調査を実施した。 ケンブリッジ大学図書館では、アストン・サトウ・コレクションにあるサトウの関係史料の閲覧・複写は本年度で終了した。サトウの平田国学への関心はある時期から断絶していることから、その理由を示す史料を見出そうとした。結論的には、ロンドン大学日本学科の創設や宗教的ミッションの有無など、さらなる史料の確認が必要となることが判明した。この調査は次年度、最終年度であるがオックスフォード大学図書館において、可能な限り行いたい。 ドイツ・ミュンスターにおけるケンペルマンのギムナジウム調査は、ケンペルマン在学時のカリキュラムならびにイヤーブックを閲覧、撮影した。調査では、来日ドイツ人が宗教的ミッションという任務を負っていた可能性が高いという感触を得た。ギムナジウムを修了したケンペルマンは、将来エリートの道を保障されていた。今回文書館で彼の学歴が判明したことは大きな収穫である。ちなみにミュンスターは、中世の大学都市で、現在もカトリック教徒が多い地域である。ケンペルマンの宗教的背景を探る為に、次年度は、出生地における調査を実施したい。
|