平成19年度、次のような研究課題に取り組みその成果を得た。 1.幼児期前半の子どもの砂遊び観察とデータの収集 1歳半から2歳児期の幼児に焦点を当て、およそ3ヵ月に1回の砂遊び観察を行い、ビデオカメラ及びデジタルカメラによって遊び行為のデータを収集した。特に前年度からの継続観察として、特定幼児2名の加齢に伴う砂遊びの変化を追いながらその特徴を分析した。この時期の遊びの特徴として、もの(道具類)の操作を主とする砂遊びから、砂という物質素材の特徴に働きかける遊びの増加が見られた。 2.砂遊び・砂場環境に対する保育者の意識と保育実践の関わり 保育者を対象とした砂遊びのワークショップを姫路市及び北九州市において行い、保育者の砂遊びに対する意識の変化と、その後の保育実践や保育環境における砂場の位置づけについて調査を行った。その結果としては、保育者自身に子どもの遊びを観察するための視点の確立が図られたこと、また子どもがアクセスやすい砂場環境の改善が試みられたことなどがわかった。 3.砂場に関する歴史研究 前年度末、アメリカ合衆国において入手した、1900年前後のアメリカ東部におけるプレイグラウンド・ムーブメントに関する資料の分析を行い、当時の砂場の意味と子どもの遊びに果たした役割について考察を行った。特におよそ100年前に見られた遊び場が今日においても地域コミュニティにおいて重要な役割を果たしていることは特筆される。その一方、近代的な遊具によって遊び空間が占められている現代の公園においては砂場が設置されていないところもあり、アメリカにおける遊び場への大人や社会の意識の変化も伺え、より検討を深めるべき課題をみつけた。
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