研究概要 |
本報告書は以下の構成から成っている。第一に本研究の意義・目的・経緯、第二に地方自治体の教育政策策定過程における教育委員会の役割、第三にアメリカ地方教育統治の動向と課題、第四にアメリカの教育統治の変質と教育行政研究の課題、第五に教育への市長のリーダーシップと参加である。第一では、本研究の意義ならびに目的および、研究経費、研究発表の概要について記述した。第二および第三は、アメリカの地方教育委員会制度の実態と課題、市長による直轄管理改革の背景と目的、直轄管理の方法・影響ならびに批判について言及し,この動向がアメリカの連邦・州・地方の三層構造の抜本的再編をもたらす可能性を示唆した。それのみでなく、わが国において教育委員会再編論が活発化しており、論争に対して貴重な一石を投じることになる点について言及した。同時に、既存の教育委員会制度を前提としたわが国の地方教育行政研究に対しても貴重な示唆を与えることについて論究した。第四では、市長による直轄管理が公立学校の民営化を随伴しており、民営化ならびに学校選択の推進に顕現される政策の推進が教育行政研究に与える影響について論じた。最後に全米市長会が発行した市長による直轄管理推進のための重要な論拠を示す文書の邦訳を掲載した。この文書内ではコラムにおいて、個別の都市の市長自身が直轄管理の推進の根拠について明快に論じているだけでなく、全体的に、市長は直轄管理のメリット・デメリットを十分に理解した上で同政策を積極的に推進することの意義が示されており、潜在的な影響力を内包した文書であると判断できる。
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