研究概要 |
前年度に引き続き大学卒業者のキャリアを検討するために,ケンブリジ大学のガートン、カレッジとニューナム、カレッジのアーカイブズ,及び同大学図書館で文献調査を実施した。 19世紀末から20世紀にかけてイギリスの大学における女子学生数は急増し,1930年にはイギリスの大学生全体の4人に1人が女性であった。その主たる要因は市民大学の増設とそこにおける女子学生数の増加であり,オックスブリッジの女子学生は少数エリートに属する。本研究では,オックスブリッジと市民大学の女子学生の祉会的出自や入学時の年齢等を比較し,卒業生のキャリアの相違に留意しつつも,主たる考察の対象をケンブリッジ大学ガートン、カレッジの卒業生に絞った。同カレッジの卒業後のキャリアに関する情報を得るうえで重要な資料は,1948年に編纂された同窓会名簿である。そこで,この名簿の記載内容を詳細に検討し,1880年から1910年まで十年ごとの入学者について,入学前の学習歴,父親の職業,卒業後の就業状況,社会的活動,および結婚の有無などを整理し分析した。その結果,(1)初期の卒業性にとって職業と結婚とは二者択一の関係にあり,1900年に両者がほぼ同数となるまで後者の数が前者を上回った,(2)職業の大半は教職であり,1910年まで卒業生の半数以上,就業者の4人に3人までが教職に就いた。しかし教職の中でのキャリア形成の様相は年代とともに変化している,(3)教職以外では,有職無職様々な形をとりながらアカデミズムの世界で生きた女性,卒業後に医学校等に進学し医師となった女性,結婚後ボランティアなど社会活動で活躍した女性が目立つこと,また比較的多くの者が海外居住経験をもっているなど,同カレッジ卒業生のキャリアの傾向や特徴を指摘した。
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