研究課題
基盤研究(C)
本研究は、フランスの初等学校における教育方法の革新運動に関するものである。とくに、就学前教育の機関である保育学校と小学校(あわせて初等学校)の9年間を3年間ごとの3つの学習期で編成する学習期システムについて、その導入に至る経緯と実際の運用をとりあげた。本研究期間において、学習期という考え方を教育政策のレベルと実際の実践のレベルで明らかにすることを目的とした。調査によって明らかになったことは以下の通りである。(1)フランスの学習期制の導入は、1960年代からの実験学校の実践の結果に基づくものである。これらの学校の実践は、多様な生徒の異質性に基づく教育実践、及び集団における協同的な学習を基本にして、その実践の具体化の方法を開発している。(2)現在の教育革新の動向は、長い歴史を持つフランスの教育運動(とくに、フランス新教育グループGFENなど)と関係がある。(3)教育革新の運動は、その学校を支える地域や親のコミュニティーの支えがなければ実現できない。学習期制の先導的な実験学校の実践は、地域コミュニティーとの関係性の上に築かれてきた。 (4)現在の動向は、世界的な学力競争の中で、教育の質が問われ、初等学校の役割にも厳しい視線が投げかけられている。その流れの中で、学習期制のあり方も問題になるであろう。(5)フランスに展開される教育革新と関わる多様な教育実践の学校、「普通とは違う学校」について資料を作成した。(6)フランスの初等教育制度が成立している教育の状況と法的根拠については、考察の前提であるので、詳細な資料を作成した。
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