研究概要 |
研究二年目の本年度は,前年度集めた農村史料の分析を始めるとともに,重点的な対象に関するフィールド研究に着手した。また今年度から,武家の日記史料の子どもと子育てに関する記述を抽出する作業を始めた。具体的には, (1)昨年度子育てに関する記述を抽出した農村のB記15点のなかから,とくに比較的記述の詳しい『宗伊日記』(山形地方)について,研究補助者に依頼して抽出した史料群と自身の史料抽出の揚合とを比較した。補助者の協力を得て広く史料を探索することの意味について検討するためである。成育儀礼や疱瘡など数多くの日記を網羅することで見えてくる事実はあるが,家族関係の感情的葛藤など重要な問題が見落とされることも改めて確認でき,日記研究の分析視点の客観化の難しさ,感情記述や子どもに関する記録の少ない近世日記の分析を補助者の協力で進めることの困難を確認した。また『宗伊日記』,会津地方の寺子屋「継声館」の師匠の日記など,重点日記についてフィールド調査を開始した。重点日記について地域差や階層差を解明することに力点を置く。 (2)武士の日記では,とくに子どもに関する記述が多い日記として,江戸在住の旗本の妻,『伊関隆子日記』の整理を始めている。この日記と対比が可能なものとして,日記ではないが只野真葛『むかし話』の記述と対比させて分析を始めている。ほかの都市在住の武家の日記としては,龍野藩儒股野玉川の日記,後期では相馬藩熊川家文書,『水野伊織日記』などを検討している。
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