私学の積極的な存在意義は国公立学校におけるのとは異質な私学教育の独自性にもとめられるが、そのためには私学は教育政策上いかに処遇され、教育法制上どのように位置づけられなくてはならないか。現行法制上、私学は「私学の自由」を享有しており、そしてこの自由には「学校を設立する自由」はもとより、「私学における教育の自由」や「傾向経営の自由」などが含有されているのか。また大多数の自由民主主義国家においては、なぜ、私学の存在が積極的に評価され、私学に対して公費助成がなされているのか。そしてこの場合、いうところの私学助成は法制度上、その性格は行政権の裁量に委ねられた補助金なのか。それとも、ヨーロッパ議会の決議(1984年)にもあるように、それは本来、私学のレーゾン、デートルや社会公共的役割に現実的・財政的な基盤を与えるものとして、むしろ私学の制度的保障や「私学の自由」の法的保障から導出される国の義務に属しているのか。さらには、私学助成に伴うパブリック・コントロールは、「私学の自由」との法的緊張において、いかなる範囲でどの程度にまで及びうるのか。そこで本研究は、「私学の存在意義」と「私学の自由」、さらには「私学の公共性」について比較法学的な観点から理論的考察をくわえ、これをうけてオランダ、ドイツ、デンマーク、ベルギー、スペイン、ノルウェーの6ケ国、とくに私学優位国オランダについて、「私学の自由」と「私学助成」に関わる法制状況を学校法学の観点から検証し、そしてこれについて報告書を作成し、公刊した。
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