近年、先進諸国では、学校選択制度が大きな政策的関心事のひとつとなっている。イギリスでも、1990年より学校選択の自由化が全国的に進められてきた。イギリスで学校選択制度を導入した理由のひとつは、学校間の競争を促進させて学校の変革・活性化を図り、教育の質・水準を向上させることにあった。また、我が国では、品川区での学校選択制の導入以降、学校選択制を導入する自治体は確実に増加している。こうした自治体の中にも、たとえば、品川区、荒川区などは、学校選択制度によって、学校の変革を通じて教育の改善・水準の向上を目指すことがその主目的のひとつであるとされている。それでは果たして、学校選択制度は学校の変革および教育の改善・水準の向上に効果的なのであろうか。本研究は、イギリスの中等学校選択制度の、学校の変革および教育改善・教育水準向上への有効性を、実証的に明らかにすることを目的とする。 本年度は、郵送法により実施した中等学校長に対する調査データの分析を「競争的環境」と教育の改善・教育水準の向上に焦点を当てて行った。主な分析結果は以下のとおりである。(1)人気校よりも不人気校の方が「競争」を熾烈だと感じている。(2)競争の程度が強いほど生徒の学習にとって生徒の学習にとって利益があるか否かについて見解が分かれていく。(3)競争の程度が強い方が生徒の社会経済的分離が強まる。(4)競争の程度が強い方が保護者に対しての応答性が増す。(5)競争の程度が強い方がGCSE試験成績を向上させようと努力する。(6)競争の程度が強くなると教員のモラールの向上に否定的な見解が増す。
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