本研究は、戦後改革期から現代におけるわが国の高等教育政策について、(1)政策形成・決定プロセスに着目した「政策過程論」、ならびに(2)数量データを利用した多変量解析(イベントヒストリー分析)という、定性的・定量的な方法論を組み合わせて援用することによって、その形成・決定のメカニズムを解明することを目的とするものであり、今年度は本研究プロジェクトの最終年度に当たり、これまでの研究の知見をとりまとめてきた。 まず定性的分析としては、専門職養成と私学政策に焦点を絞り、前者では国会議事録をテキストデータとする内容分析をすすめ、「専門職]に関連するタームであるプロフェッション、プロフェッショナル、専門家などとの語の使用状況の相違から、わが国の専門職養成政策の特徴について考察した。また後者については、政策担当者ならびに私学関係者へのインタビューと資料から法制度の整備を中心とした政策形成を分析した。これらはこれまでの定性的な分析方法を補完し、また分析対象としても空白であった部分を埋めるものと考えられる。また定量的な分析としては、高等教育政策波及のプロセスを制度論の枠組みに依拠しつつ計量手法により明らかにした。とくに大学の自己点検・評価活動の波及プロセスを解明するために、新たにイベント・ヒストリー分析を応用し、機関の意思決定が歴史・規模・大学の威信以外に、他機関や全国の動向に左右されるという制度論で言うところの「水平波及」「垂直波及」「相互依存」を確認できた点は大きな知見であり、今後の高等教育研究において制度論に依拠した分析の可能性を示した。
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