本年度は、急速に国際化する我が国のビジネススクールにとって有効な教育カリキュラムと考えられる国際インターンシッププログラムに関する実態調査をおこなった。訪問先はハワイ州ホノルル市にある日米経営科学研究所(Japan-America Institute of Management Science)であり、Blair Odo博士(同研究所副所長)及びスタッフへのヒアリング・文献調査をおこなった。日米経営科学研究所は1972年に富士通株式会社の出資により設立され、当初は富士通社員のための国際ビジネス教育機関を目的としていたが、ハワイ大学ビジネススクールとの提携により国際EMBAプログラムを開設するに至った。現在の所長は、我が国の経営学教育における権威・野中郁次郎一橋大学名誉教授である。日米経営科学研究所は、現在でも富士通社員研修機関としての役割を維持しているが、先に述べた国際EMBAの日本プログラム(JEMBAプログラム)は特に成功をおさめている良い例といえる。JEMBA修了後はMBA学位のほかにサーティフィケートが授与されるが、言語能力習得や異文化理解がカリキュラムに組み込まれているのが最大のメリットである。民間資本による異文化組織対応型ビジネススクールカリキュラムの構築例としては、平成20年度以前に海外調査を実施したスイス・IMD(ネスレ出資)、アメリカ・ペンシルバニア大学ローダーインスティチュート(エステ・ローダー出資)に共通した点であり、短期間による言語習得及び異文化要素をカリキュラムに取り入れたサウスカロライナ大学ムーアビジネススクール(アメリカ)の海外インターンシッププログラムにも共通している。多文化経営スキル習得において大きな役割を果たしていることが確認されたわけだが、我が国においては民間企業とビジネススクール間の産学連携という課題点が浮き彫りとなった。
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