本研究の目的は、1980年代以降の高校教育改革のインパクトを、各学校の教育活動の組織化のレベルで把握し、改革の意味を改めて検証するところにある。研究は各学校の教育活動の組織化の態様を明らかにする段階と、教師・生徒にそれがどのような意味をもっていたかを明らかにする段階からなり、2年度目にあたる平成19年度においては主として後者の課題へのアプロ一チを試みた。ただ、平成18年度において「世界史未履修問題」が社会問題化したことで教育活動組織化の核をなす各学校の教育課程の構成に踏み込む調査の実施が困難になり、平成19年度の研究も限られた情報のなかでの実施となった。研究では、これまでの研究の知見を本研究の枠組のなかで整理しつつ、入手した資料とインタビュー調査でもって、教育活動の組織化の態様が教師と生徒にどのように受けとめられているかを仮説的に明らかにした。すなわち、この間の改革は、教育活動組織化の原理である「類別(classification)」と「枠づけ(framing)」を全体に弱める方向を目指していたものの、その学校レベルでの受けとめ方は一様でなく、さらに個別の学校に焦点を合わせた場合にも、むしろそれが教育活動の組織化に葛藤を引き起すことがあり得ること、さらには、原理的に「類別」と「枠づけ」が弱められた分だけ教師あるいは生徒の対応に分化が生じている可能性があることを明らかにした。さらに、このことを踏まえて、学校の教育活動の組織化は各校の社会的な位置づけなど学校を取り巻く構造的な要因に規定されており、「類別」と「枠づけ」を弱める方向での教育改革は、学校内部の機能不全を学校内部の教育活動の組織化の在り方を変えることによって解消しようとしたことにおいて意味はあったものの、であるがゆえに、そこに改革としての限界もあったと見て取った。
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