研究課題
基盤研究(C)
本研究は、日本とフランスにおける高等教育から職業への移行過程について、文化資本の持続効果という観点から、経験的な資料とデータに基づく現代的な特徴と問題点を明らかにすることを目的にしている。特に、大学生活を通じて学問、文化、スポーツなどの文化習得を遂げていく側面に着目し、長い時間をかけて身体化される文化資本の特性が、今日の多様化・長期化する大学生の職業移行にいかなる有用性を与えているかを問題に取り上げた。平成18年度は、フランスで実施された全国調査統計資料を収集・再分析するとともに、日本での先行研究を整理し、上越教育大学と関西私立大学で過去3年間継続実施してきた追跡調査の結果を分析した。11〜12月には上越教育大学4年次生を対象に、第4回「大学・短大生の生活と文化についての調査」を実施し、職業形成からみた4年間の大学生活について分析を行った。特に、フランスにおける伝統的な職業形成の考え方である「メチエ(metier)」と、近年「国際標準」の考え方として盛んに議論される「コンピテンシー(competence)」の関係に着目し、その日本への展開について調査結果をもとに分析を試みた。平成19年度は、日仏の高等教育から職業への移行に関する既存研究を整理するとともに、大学生を対象とする過去の調査結果をもとにさらなる分析を進め、11〜12月には上越教育大学の上記調査対象者を含む過去5年間の卒業生を象に、「学生経験と職業生活についての調査」を郵送にて実施した。その結果、4年間の大学生活を通じ、一元的な文化価値よりも、多元的な予期的社会化を通じた可変的で順応主義的な文化資本形成が図られること、職業移行後は文化資本の持続効果のみならず、職業経験を通じて一層の文化習得を推し進める付加効果が見られることを明らかにした。
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