植民地下朝鮮にあった高等女学校を卒業後、内地に留学した朝鮮人女子学生の実態調査に焦点を当て、留学体験者にインタビュー調査を実施するとともに、関連する諸文献・統計資料等の収集に努めた結果、以下の研究実績を得た。 1)淑明高等女学校、進明高等女学校、京畿高等女学校、梨花高等女学校などの各学校史の中、卒業生の進路等に関する記述を翻訳・整理することにより、各高女における留学生数の変動、卒業後の進路・職業等、朝鮮からの内地留学生の動向を概ね把握した。 2)帝国女子専門学校(現、相模女子大学)に留学した張晶玉(進明高等女学校卒)、崔粉金(進高等女学校卒)に対して、内地留学の動機、授業、寮・日常生活・交友関係、卒業後の進路などに関するインタビュー調査を実施し、内地での留学生活に関する具体的証言を得た。 3)ユ・ジョンホ『僕の解放前後(1940-1949)』(全297ページ)を翻訳し、同時代の男子学生の勉学状況、植民地下での日常生活・意識、卒業後の進路・職業観などを女子学生の状況と比較・検討した。 4)『培花高等女学校100年史』の戦前の部の翻訳を完了し、内容の検討を行なうとともに、他のキリスト教系高等女学校の教育目的、教育内容、卒業後の進路等と比較した。 5)「鴻嬉寮」(淑明高等女学校と進明高等女学校からの内地留学生のために、李王家が東京渋谷区若木町に建設した寮)に関する資料の収集、入寮者(張晶玉、尹瑞石)に対するインタビュー調査等により、鴻嬉寮の概要を把握した。 6)上記の成果の一部を、論文「植民地下朝鮮の女学生-進明高等女学校を中心に-」にまとめ、『岐阜大学留学生センター紀要2006』に発表した。
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