本研究では大きく3つの作業を行っている。すなわち(1)私立大学の経営行動に関する調査、(2)政府の私立大学政策に関する調査、そして(3)これら(1)・(2)の知見を踏まえての総合的考察、である。平成18年度には(2)を中心に、19年度には(1)を中心に作業を進めた。 具体的には、まず、私大の量的規模にかかわるデータベースを作成し、個別大学についての予科・学部・専門部ごとの在学者数、志願者数、入学者数、卒業者数、教員数などを昭和10年代から20年代初頭にかけての時期についてデータ入力をおこなった。またそれらを総合して、私立大学全体の量的規模の変化をあらわす統計も整理した。これまで全私立大学についてのこの時期のデータベースは存在しておらず、今回のデータベースは大いに資料的価値があると考える。 さらに、各私立大学の組織改編に関する史料の分析を開始した。各大学の沿革史、資料集などを中心に参照しつつ、戦時期における各大学の経営行動の推移を全27校中18校について調査を終了している。 また、これまで収集・整理した資料を踏まえての中間的考察として、「戦争・私学・政府-戦時期私立大学の公共性」と題した論考をまとめ、研究ワークショップ(「東北アジア:<公と私>から歴史を問い直す-1930-40」延世大学と名古屋大学とのジョイントプロジェクト、2007年12月ソウルにて開催)で報告を行った。
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