研究概要 |
本研究では大きく3つの作業を行った。すなわち(1)私立大学の経営行動に関する調査、(2)政府の私立大学政策に関する調査、そして(3)これら(1)・(2)の知見を踏まえての総合的考察、である。平成18年度には(2)を中心に、19年度には(1)を中心に作業を進め,最終年度の20年度には(1)と(2)の残された作業をおこないつつ、主に(3)に取り組んだ。 (1)については私大にデータベースに財政データを追加し、また各私立大学の組織改編に関する史料を国立公文書館等で検索し、整理をおこなった。私大政策については、同じく公文書館所蔵の史料とともに、政策立案関係者の個人文書等の分析もおこなった。 (3)については以上の作業をふまえて、総合的に考察をおこない日本教育社会学会で発表をし、通説とは異なり、志願者バブル的状況のなかで成長する私学の姿を描き出し、また政府と私大との関係も単なる前者の後者に対する統制的側面だけではない複雑な様相を示すことを明らかにした。さらにとくに私大の財政的側面に着目し、戦時期の私大の財務状況の各校を比較研究をおこない名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要に公表したが、そこでは、ほとんどの私学が戦時期に財務を安定させていたこと、またその背景に志願者の増加や積極的な私大の経営行動などがあったことを明確にした。
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