本研究の目的はメディア研究と教育社会学の両面からラジオ-テレビを中心とした「放送メディア教育」の発展を分析し、インターネット技術を使ったe-learningの今後の運用にも有効な見取り図を提供ことであった。2006年度の放送文献調査、2007年度の教育文献調査を踏まえて、2008年度は論文3件、学会等での報告3件、図書3件の成果を挙げた。主要なものとしては、教室でのテレビ利用の時系列的変遷を考察した「放送教育の時代-もうひとつの放送文化史」(NHK放送文化研究所編『現代社会とメディア・家族・世代』(新曜社2008年)、<通信=放送>教育におけるテレビ利用の問題点を論じた佐藤卓己/井上義和編『ラーニング・アロン-通信教育のメディア学』(新曜社2008年)、生涯学習社会におけるテレビの役割を論じた「インターネット時代のテレビ的教養:"ローカルな知"の可能性?」『日本の社会教育』第52集(日本社会教育学会)であり、さらに上記の論稿を踏まえて『テレビ的教養-一億総博知化の系譜』(NTT出版2008年)を公刊した。この作業を通じて、『放送教育』『視聴覚教育』ほかの調査を徹底し、「テレビ的教養」の社会学的分析をおこなった。特に、『テレビ的教養』は数多くの新聞雑誌で紹介され、2008年12月NHK放送文化研究所におけるワークショップ「テレビ的教養をめぐって」では、教育番組、教養番組の制作スタッフとの議論も行った。また、その成果は2008年6月韓国・西江大学言論文化研究所における講演「インターネット時代のテレビ的教養」、同年12月中国・上海社会科学院における報告「日本におけるテレビ的教養の系譜」によって海外でも紹介した。これにより、東アジアにおけるテレビ的教養の国際的共同研究にむけて第一歩を踏み出した。
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